ニューヨークで子供から大人まで気軽に通えるバレエ教室「ハリヤマ・バレエ」を運営する針山 真実さん。またバレエピアニストとしてディズニーからCDをリリースするなど、パフォーマンスに徹底的なこだわりをもちマルチに活躍している。今回はそんな彼女にインタビュー!
- 1 渡米を決心されたきっかけは。
- 2 来たばかりの頃はどのような生活でしたか。
- 3 アーティストビザを取得されてからのお仕事は順調でしたか。
- 4 バレエ講師としてスタジオをオープンされたきかっけは。
- 5 どのように生徒さんを集められたのですか。
- 6 留学からわずか5年で素晴らしい成長をされていますね。スタジオを運営するにあたって大変なことは。
- 7 「ハリヤマ・バレエ」はどんな教室ですか?
- 8 バレリーナから教室を運営する側になり自身で一番変わったことは。
- 9 ディズニーからバレエピアニストとしてCDをリリースされていますがその経緯は。
- 10 最近のバレエで界について思うことは。
- 11 最近注目しているバレリーナや団体は。
- 12 休日はどんな風に過ごされていますか?
- 13 今後の課題や、夢などをお聞かせください。
- 14 これからニューヨークで頑張ろうと思う人たちへひと言お願いします。
- 15 好きなレストランやバーを教えてください。
- 16 最近よく使うお気に入りアプリは。
渡米を決心されたきっかけは。
一番初めにニューヨークへ来たのは18歳の頃に姉と一緒に旅行した時でした。その時は観光でアメリカン・バレエシアターを見たりして「すごいなぁ」と感動したのを覚えています。 実際に住むとなったのは1年後の2003年に入ってからで、体調を崩したことがきっかけで子供の頃から続けてきたバレエを少しお休みしようと思い、日本にいるとどうしてもバレエのことを考えてしまうので、思い切って海外移住を決意しました。
来たばかりの頃はどのような生活でしたか。
初めは語学学校へ通っていました。バレエから少し距離をおいて違うことに集中してみたいという当時の私には英語の勉強はうってつけで、毎日真面目に勉強し、1年経ってから少し英語に自信がつき日常会話を楽しめるようになりました。
貯金を切り崩したり親からのわずかな仕送りでなんとか生活をしていましたが、「どうしたらもっと自立した生活をおくれるかな」と今後の生活のことを考えた時に、ニューヨークにあるバレエやダンスのレッスンスタジオではピアノの生演奏に合わせて練習するところが多いということを知り、日本にいる時に仕事としてオファーを受けることがあったバレエピアニストとして生計を立てることが出来たらいいなと思い、色々なスタジオにレジュメをもって直接交渉しにいきました。
しかし、全部のスタジオに「君はビザがないから雇えない」と言われて、それからビザのことについて調べて、アーティストビザを取るための準備をすぐ始めました。金銭的に弁護士さんにお願いする余裕がなく、書類は全て自分で揃え現在の夫に手伝ってもらいながら、なんとかトータル数ヶ月ほどで取得することができました。
アーティストビザを取得されてからのお仕事は順調でしたか。
ビザを取得したからと言ってもそう簡単に仕事をもらえるわけでもなく「今は空きがないからもし出たら連絡する」と言われるばかりでした。 ある日、本当に「ピアニストが病欠になったので今からレッスンこれる?」と連絡があり、飛び入りで弾くことになりました。 その時の評価が良くて、ピアニストが休みになった時に連絡がくるようになったり、親しくなった講師たちがレッスンに私を指名してくれたりし、そこからご縁に恵まれ仕事として定期的に弾けるようにまでなりました。
バレリーナとして長年経験があるのと、バレエピアニストとして楽譜がなくても弾けるような経験があり、講師たちのリクエストにも臨機応変に対応できました。 時々「バレエピアニストになるためにはどうしたらいいですか?」と相談を受けることがありますが「とにかくバレエを知ること」に限ります。このレッスンにはどういう曲が合うのか自然と分かってくると思います。もちろん先生によってはリクエストする曲のテイストが全然違ってくるので、対応するキャパシティも必要になります。
バレエ講師としてスタジオをオープンされたきかっけは。
バレエピアニストとして身近でバレエを見ていて今度は自分がやりたくなってきてしまったんです。その時に自分が中心となって踊るというよりかは、教える立場としてまたバレエに関われたらいいなと思い、空いているスケジュールで大人のためのバレエクラスを始めました。
どのように生徒さんを集められたのですか。
口コミです。また集めた生徒さん同士の口コミでどんどん広がっていきました。 始めは大人を対象にしたオープンクラスでしたが、生徒さんのひとりが自分のお嬢さんにもバレエを習わせたいというリクエストがきっかけで子供向けの教室も始めることになりました。
当時、ご縁で極真カラテの道場の一部を使わせてもらえることになり、2008年にハリヤマ・バレエ教室を構えることになりました。これまではレンタルスタジオでレッスンしていたので、時々ダブルブッキングでそのスタジオが使えなく、別の階に急遽移動したりなんてこともありました (笑)。 正式にオープンしてから有難いこと生徒さんが増え、レッスンの時間と場所がさらに必要になったのをきっかけに2010年に39thにある少し広いスタジオへ引っ越しました。
留学からわずか5年で素晴らしい成長をされていますね。スタジオを運営するにあたって大変なことは。
実は2016年に私たちが入っていたビルの全てのテナントは直ちに退去しなければいけなくなったんです。ニューヨークにありがちな建て替え問題というか…。しかし私はリース契約がまだ残っており、交渉した結果半年先まで引き延ばしてもらいましたが、結局新しいところを探さないといけないことには変わりなく、あの時は苦労しました。
バレエをするのに十分な広さを考えてスタジオを探したら家賃が高くなります。かといって月謝の値上げには抵抗があり複雑な心境でした。 バレエをする環境は天井の高さや奥行き、床の状態も大切になってきます。立地条件も不便なところにしたくないしということで、現在のスタジオを見つけるまで3年ほどかかりました。テナントを見つけてからバレエに適した内装に施さないといけないので、時間とお金もまたさらにかかりました。
「ハリヤマ・バレエ」はどんな教室ですか?
「バレエをやりたい子」皆んなに来てもらいたいです。バレエを通じて踊る楽しさはもちろん、新しい友達ができてここに来るのが楽しいって感じてもらえたら嬉しいですし。ここでバレエに出会ってプロを目指す子もいて、お互いを刺激し合えたらいいなと思います。
バレリーナから教室を運営する側になり自身で一番変わったことは。
「皆さんをハッピーにしたい」と思うことです。 また自分が生徒さんたちに発する言葉ひと言ひと言にとても大きな責任を感じています。特に子供たちと話す時、自分の何気ないひと言が子供たちのモチベーションを左右する影響があるので言葉選びには気をつけています。
ディズニーからバレエピアニストとしてCDをリリースされていますがその経緯は。
プロデューサーさんが私を見つけてくださったことがきっかです。ある日メールがきて「まだ企画段階ですが、ディズニーのバレエミュージックCDを作る案件があり、もし企画が通ったらご協力していただけませんか」というオファーで。子供の頃からディズニーは好きでしたのでもちろん快諾させていただきました。 ディズニーから合計で6枚リリースし、選曲からアレンジ、演奏まですべて担当することになりました。
通常、バレエの専門家が選曲→アレンジャーが楽曲をアレンジ→楽譜に起こす→ピアニストに渡し演奏する、という流れになります。 しかしその全ての工程を私ひとりに託されるという(笑)、素敵な機会をいただきました。ディズニー映画をまた改めてたくさん観て、サントラもひたすら聞き慎重に曲を選びアレンジしていきました。
最近のバレエで界について思うことは。
昔に比べるとバレエのレベルがかなり上がり、プロを目指すならば本当に大変だと思います。求められる技術の難易度も高く、アクロバティックな演出にフォーカスされがちかなと。もちろん大会では技術的なことも重要になりますが、バレエってドラマ性をきちんと理解し、それを表現することが大切なので、子供たちにその理解を深めてもらいたいなと思います。
最近注目しているバレリーナや団体は。
私が習ってきたメゾットがクラシックバレエの最高峰と呼ばれるロシアの「マリインスキー・バレエ団」からなるもので、私にとっては大きな存在です。
そのマリンスキー・バレエ団に入団した長久メイさんという若き18歳のバレリーナがいて、彼女は13歳でモナコの名門プリンセス・グレース・アカデミーに留学し、15歳の時にマリインスキーの舞台監督からオファーをもらい入団することになったんです。そして17歳で日本人初の「くるみ割り人形」の主役に抜擢され、世界的に注目されています。 実は彼女が12歳の時に会う機会があり、その頃から彼女の活躍は楽しみにしています。
休日はどんな風に過ごされていますか?
3歳になる娘がいて彼女が中心となっています(笑)。日々のスケジュールがめまぐるしく、子供がいてなかなかのんびりしていられないので、何事に対しても決断力が早くなりました。
今後の課題や、夢などをお聞かせください。
「どのようにしたら子供たちをうまく導くことができるか」と日々考え、今できることをひとつひとつ大切にしながら取り組んでいます。
これからニューヨークで頑張ろうと思う人たちへひと言お願いします。
行動すること。チャレンジして止めるも続けるも自分の責任で。待っていても誰も自分が探している答えを見つけてくれません。
好きなレストランやバーを教えてください。
外食することがほとんどなく…。スイーツで言ったらアッパーイーストにある「Two Little Red Hens」のニューヨークチーズケーキが好きです。それとハンバーガーのシェイクシャックのデザートメニューで「カスタード」もオススメです。
最近よく使うお気に入りアプリは。
インスタグラムです。スクールのも個人のもあり、投稿するだけでなく ついついチェックしてしまいます。
プロフィール
針山 真実 (Mami Hriyama)
Webサイト
大阪府吹田市出身。バレエスタジオ「ハリヤマ・バレエ」主宰。クラリネット奏者の父、ピアニストの母、バレリーナ/舞台女優の姉2人をもち、幼少からバレエ、ピアノを学ぶ。2005年9月、ニューヨークにてバレエ教室「ハリヤマ・バレエ」を開校。2014年、ディズニー公式のバレエレッスン用CDシリーズをリリース。