ギフテッドプログラムってなに?
ギフテッドプログラムとは、ニューヨーク市が行っている、生まれつき秀でた学習能力や素質を持っている子どもたちのための特別なプログラムです。ニューヨーク以外でも多くのアメリカの州で行っています。
だいたいニューヨーク市のどこの学校区でも公立学校の中にギフテッドのクラスがあります。さらにニューヨーク市には5校、普通学級のない全校ギフテッド生徒のみの学校があります。公立校のため、学費はどの学校も無料です。
どうやって入るの?
年に一回、キンダーガーデン(日本の幼稚園の年長にあたる)に入る前の年(現4歳児)から3年生に進級する年(7歳児、現2年生)までのニューヨークに住んでいる児童を対象にテストを行い、その結果によって決まります。
テストは任意で学校区のウェブサイトから申し込めます(無料。毎年秋に申し込み。テスト実施は毎年1月か2月)。
テストの結果が、90パーセンタイル(統計的に全国の同年齢の90%の子どもの点数よりも良い点数)の点数がとれた子がギフテッドプログラムの対象(5つの全校ギフテッドの生徒だけの学校は97パーセンタイル以上)となります。結果はウェブサイトからも確認でき、手紙でも届きます。
2018年度の新キンダーガーデン(日本の年長)では14,450人がテストを申し込み
そのうち2,100人(約15%)が学校区のギフテッドプログラム対象、1,559人(約11%)がギフテッド生徒のみの学校対象という結果でした。
ただし、対象者に比べ席数が限られているため、申し込む資格があった場合でも人気校では抽選となり必ずしも希望校に入れないことが多いです。
ギフテッドのテストはどんなもの?
テストはOtis-Lennon School Ability Test (OLSAT) という言語分野(聴解力や論理性など)を見るテストとNaglieri Nonverbal Ability Test (NNAT)という言葉を使わない能力(問題解決能力、視覚的な論理性、空間認識など)をみるテストの2種類を使用しています。
ニューヨークは人種のるつぼと言われるだけあって、ギフテッドのテストも第一言語が英語でない児童は色々な言語(アラビア語、フランス語、スペンイン語、ロシア語、中国語、韓国語など11ヶ国語)で受けられることができます。残念ながら日本語では今現在受けることはできません。
ギフテッドのテストのための準備
教育意識の高いニューヨーカーの間ではギフテッドの準備も子どもが小さい頃から行っています。オンラインでギフテッドのテスト用の練習問題を提供するウェブサイトや個人経営のギフテッドテスト対策用の塾、ギフテッドテスト対策専門の家庭教師、市販の対策本まで様々なものがあります。
日本の幼稚園のお受験に似たような感覚かもしれません。準備用の問題はNY市のギフテッドプログラム申込み用パンフレットにものっています。
ギフテッドプログラムにはどんな学校があるの?
ニューヨーク市には2種類のギフテッド生徒用のプログラムがあります。
- ニューヨーク市の5校の全校ギフテッド児童のみの学校
テストのスコアが97パーセンタイル以上の子が申し込める学校全体がギフテッド生徒のみの学校になります。定員が応募者よりも毎年少ないため、実質はスコアが99パーセンタイルでないと入ることが難しいと言われています。
99パーセンタイルでも人気校(マンハッタンのAnderson やNEST+M )では抽選で外れて入れないこともあります。兄弟がすでに通っている場合はスコアが申し込み基準に達していれば優先的に入学できます。
- ニューヨーク市の通常の公立校に設置されたギフテッドクラス
普通の学校の中にギフテッドのクラスがあります。だいたいどこの学校区にもギフテッドのクラスのある学校を設置しています。その中でも人気校には応募が集中し、競争率は学校によって変わります。また、その学校区に住んでいる生徒が優先的に入れる仕組みになっています。
ギフテッドの学校は普通の学校とどう違うの?
ギフテッドの学校には日本の教育指導要領のようなものはなく(ある程度はニューヨーク市のcommon standardに即している必要がありますが)、学校の教育方針によってかなり授業内容も変わります。宿題の量も、キンダーガーデンから毎日大量に出る学校もあれば、週に一回出る学校、様々です。
例えば、ギフテッド児童のみの学校、NEST+Mでは算数はシンガポール式算数を取り入れており、国語ではコロンビア大学の読み書きプログラムを使用しています。情操教育にも力を入れていて、メディテーション(瞑想)やヨガ、マインドフルネスのワークショップを授業に取り入れているクラスもあります。また、団体で他の学校と競うチェスや算数チーム、中等部ではディベート(討論)などの活動も取り入れています。
制服のある学校もあれば、ない学校もあります。
ただ、全体的に見られるのはやはり教えるスピードが速く(だいたい1学年以上の授業内容)、授業も掘り下げて学ぶことが多いです。(例えば、NEST+Mのキンダーガーデン(5歳児)の動物についての学習では「脊椎・無脊椎動物」の分類、生息地、虫・両生類・魚・動物などの特徴や見分け方など掘り下げて学ぶ)
ギフテッドは何年生まで
全体がギフテッドの学校5校のうち4校は中学(1校は高校まで)まで続いていて、一度入ったら成績がたとえ悪いとしても退学させられることはありません。
また、入った後に何かしら特別な教育的なニーズ(学習障害、ADHDなど)があることがわかった場合も学校内で個々のニーズに対応してくれます(学校内でのカウンセリング、読み書きの専門家による指導、言語療法などが受けられます)。
ギフテッドに入る利点や注意点
やはり一番の利点は、
- より高度で刺激的な授業を受けられること
- 同じように教育に対する意識の高い家庭の子ども達に囲まれて学習できること
- 多様な文化的背景のある子ども達が多いこと(例えば、Nest+Mでは人種構成はアフリカ系アメリカ人8%, ヒスパニック系12% ,白人 40% , 日本人を含めたアジア系 33%)
- 教師も熱心でやる気のある教師が多いこと
などが挙げられると思います。
また、全体がギフテッド生徒の学校に至っては中学校受験をしなくてもいいということも魅力の一つです。
ひとつ気をつけたいのはやはりスピードや宿題の量が多い分、お子さんによっては高い知能は持っていてもまだ勉強を落ち着いてできる姿勢のない子にとっては入ってから厳しい時もあります。
ギフテッドの結果が来た後にそれぞれの学校がオープンスクールといって入学希望者への説明会を行うのでそこで学校の教育方針なども確認してお子さん(ご両親も)に合いそうかどうかも判断する必要もあると思います。
それでも、子どもそれぞれの理解力や教育のスピードに合わせて伸びる子は伸びるところまでとことん才能を伸ばそうとしてくれるのは、アメリカならではの素晴らしい教育だといえると思います。