自閉症について知るということ

最近は日本でも自閉症スペクトラム(ASD:Autism Spectrum Disorder)の主人公を題材にしたドラマや、発達障害があると公言している芸能人などもいて自閉症や発達障害という言葉は広く知られ身近に感じられているように思います。ただ、詳しくは知らなかったり誤解をしていることもあるかもしれません。 では自閉症とはどういった症状のある人のことをさすのでしょう?

身近な存在の自閉症

 自閉症スペクトラムとは発達障害(生まれつき脳の機能に障害があるために幼児のうちから症状がみられる障害)の一種で社会性や対人関係、コミュニケーション能力や想像力、興味や行動の偏りやこだわりに特徴や難しさが現れます。個人差が大きく、その幅が広いためスペクトラム(連続体)という言い方が使用されています。

同じ自閉症スペクトラムでも全体的に知的な遅れがありコミュニケーションをとるために視覚的な補助(絵や写真を使用したPECS<Picture Exchange System>、ipadなどにダウンロードする専用のコミュニケーション用プログラム)が必要な子どもや大人もいれば、知的に平均よりとても高く社会的にも地位の高い職業につき活躍している人(よくアスペルガー症候群として知られている人。

精神疾患の診断基準が第5版のDSM-5に変わってからはアスペルガーという名称は使用せずにASDの一つとして統一されるようになりました)もいます。自閉症スペクトラムの診断を受ける人は年々増加し、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の統計によると、現在アメリカでは59人に1人(1.69%)が自閉症スペクトラムの診断を受けていると言われるほど身近な存在になっています(2000年には150人に1人(0.66%))。女子に比べ男子の確率は4倍になり、確率的に経済的・人種的な偏りはないと言われています。

増加の理由としては様々な仮説(環境的な要因など)がありますが、自閉症の認知度があがり見逃されにくくなったこと、診断基準が変わり診断を受ける対象が広くなったことなどが大きな理由だと考えられています。

自閉症の症状は?


自閉症の傾向は早い場合では1歳ごろ、多くは2、3歳から見られ、介入が早ければ早いほど後の発達や適応に効果が見られるといわれています。先天的な要因が多いと考えられているものの、まだ原因が不明なため身体の病気の時のような生物学的な検査方法(血液検査などの)ではなく観察や聞き取りによる行動面の特徴などによって診断されます。 診断を受けるときにみられるのは以下のような特徴です(全て当てはまる必要はありませんが、これらが幼少期から見られ日常生活に支障が出ているかどうかも診断のポイントになります)。

1.社会的コミュニケーションや対人関係のつまづき
 会話のキャッチボールができない、あいまいな表現がわからない、コミュニケーションスキルに偏りや遅れがある、興味や感情を共有できない、非言語コミュニケーションにつまづきがある(目を合わさない、指差しやジェスチャーなどをつかわない)、状況によって行動や人との距離を変えるのが難しい、人に興味を持ったり付き合うのが難しいなど(いわゆる「マイペース」「空気が読めない」人)


2.行動、興味や活動の偏りやこだわりなど
  常同行動(手をひらひらさせる、身体を揺らす、同じ言葉を繰り返す<エコラリア>など)、ルーティンや同じ状態を保つことへのこだわり(変化を嫌がる)、興味の狭さ(特定のものに執着する)、感覚過敏または鈍さ(些細な刺激<視覚・聴覚・皮膚感覚・嗅覚・味覚など>を嫌がるまたは特定の刺激を好む)など。
「もしあなたが自閉症の人ひとりと会ったのなら、あなたは自閉症の人ひとりに会ったにすぎない」“If you’ve met one person with autism, you’ve met one person with autism” という Stephen Shore博士の言葉通り、自閉症といってもそれぞれあらわれる症状や行動や難しさも違います。大事なのはそれぞれの強みを上手に利用しながら弱い・苦手な部分を補いトレーニングしていくことです。

予防は?治るの?

   自閉症を含め他の発達障害は先天的な原因が大きいと考えられているため、症状や行動を抑えることはできてもその特徴とは上手く長期的に付き合っていく必要があります。ただ、自閉症への効果的な療育方法に対しては日々研究は進み、どの療育方法が科学的に効果的なのかなども調べられています。自閉症の人たちには強みもたくさんあるため(視覚的な能力が高い場合が多い、こだわりが強い反面、細部にまで注意でき興味のある分野では力を発揮できるなど)その強みやユニークさを評価して生かせる場を探していくことも大事なアプローチになっていきます。

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