アメリカでトラブルに巻き込まれたら便利な小額裁判 (スモール・クレーム・コート)

海外で生活をしていると日本では考えられないようなトラブルに巻き込まれたりすることがあります。もちろん言葉の壁、文化の違いから生じる問題もあれば、その国の慣習や法規を知らないばかりに事件に巻き込まれてしまうなんということもあります。

特にアメリカは日本よりも個人で裁判を起こしたり、裁判にかけられたりすることが日常的にあります。そこで今回は、アメリカ生活を送る中で比較的低額な金銭トラブルが起こってしまった時に、迅速でシンプルな手続きで裁判をすることができる小額裁判の「スモール・クレーム・コート(Small Claim Court)」についてご説明しましょう。

一般的なのは「賃貸契約をした時に支払ったデポジットが退去時に支払われない」、「貸したお金が返されない($5,000以下の場合)」、「物を壊されたのに代償してくれない」などといったケースで、小額裁判所が利用されています。

スモール・クレーム・コートと普通の裁判所の違い

実はこのスモール・クレーム・コートは弁護士に依頼する時に必要な複雑な手続きは要求されず、厳格な裁判の形式をふまなくてよいのです。訴訟費用と時間を、普通の裁判に比べて圧倒的に抑えることができます。しかし、提訴目的が相手に対する“威圧”や“復讐”の手段と判断された場合、裁判所側は案件の審議を拒否する場合があります。

請求できる内容

スモール・クレーム・コートを通じて相手側に請求できる救済手段は金銭の支払いに限られています。 相手側の特定の行為、行為の差し止めなどの請求は不可能です。そして、ニューヨーク州の場合は請求する金銭債務、または賠償金額は$5,000以下でなければなりません。最近カリフォリニア州では最高$10,000まで相手に請求することができるそうで、州によって金額が異なるので予め調べておくとよいでしょう。

提訴する裁判所

どこのスモール・クレーム・コートで提訴するかは訴えを起こす相手側の住所によって決まります。 例えばニューヨーク市内でスモール・クレーム・コートに提訴する場合は相手の自宅、もしくは職場の住所がニューヨーク市内になければいけません。その一方で訴えを起こす側はニューヨーク市内在住である必要はありません。

コチラから各地域のスモール・クレーム・コートの場所と電話番号を確認することができます。

提訴の手続き

まずは該当する裁判所へ行き、備え付けの書類に必要な情報(訴える相手の住所、氏名に請求金額とクレームの簡単な内容、自分の住所、氏名など)を記入し手数料を支払います。

※ニューヨーク州の場合、$1,000以下の場合は手数料が$15、それ以上から$5,000までの場合は$20。

次に担当官に必要書類を作成してもらいますが、この時に重要なことは担当官に情報を提供する時に訴訟原因を明確にすることです。

<訴えの内容を整理するためのチェックリスト>
ー損害を受けた対象:
車、不動産、身体など ー施されなかった行為:修理、適当なサービス内容や商品の提供 

ー返却されなかったもの:
補償金、敷金、動産、貸付金

ー支払われなかったもの:
給料、その他の賃金、保険金、賃貸料

ー違反された契約:
売買契約、賃貸契約、保証契約

ー損失したもの:
荷物、その他の動産、不動産の使用権利 ー請求金額 ー事件発生日時など


<本人が行けない場合>

本人が何らかの事情により裁判所に行けない場合、弁護士が代理人として出頭することも可能ですが、弁護士以外が代理人となる場合は血縁、婚姻関係の証明が必要とされます。またその場合の代理人は何の報酬も受け取ってはいけないという決まりがあります。


<郵送による提訴も可能>
ニューヨーク市のスモール・クレーム・コートに提訴する側がニューヨーク州以外在住の場合や、身体に障害があり出頭が困難な場合は郵送によって提訴することが可能です。スモール・クレーム・コートが発行している提訴用紙をWebサイトより入手し、必要な事項を書き込みます。

そして本人宛の返信用切手付き封筒と適切な手数料分の「クラーク・シビル・コート (Clark, Civil Court)」宛の「小切手 (Certified Check)」かマネーオーダーを同封して送付します。


<申請する時に必ず記入する事項>

ー提訴する人の名前
ー住所
ー提訴する理由
ー賠償金の希望額
ー提訴原因によって被った損害(例:事故にあった車を修理に出しているタクシー代など)
ー訴えたい人の名前、住所
ーその人の働いている会社(会社が通称を使っている場合は正式名称を調べる必要があります。調べるためにはその会社がある地区の「カウンティー・クラーク (County Clerk)」オフィスに行くとよいでしょう。)

審問の準備

提訴手続き後、約3~6週間で原告と被告の両方に裁判日時と内容を記した通知が届きます。審問の前にケースの立証に必要と思われる情報をすべて備えておきましょう。争議の事実関係の立証に役立つもの(例:手紙、写真、支払い済みの請求書、消印付きの小切手、レシートなど)は審問に持参しましょう。また、証人がいる場合は同伴してもらうことも可能です。

審問

仲裁人 (Arbitrator)との審問では原告側の状況説明、証拠提出、証人による証言に続き、質疑応答が行われます。被告側にも同じことが行われます。判決は裁判後、数日から数週間で郵送されます。

欠席判決

被告が欠席の場合、裁判所は「審理」を指示します。この場合、審問では原告であるご自身の陳述に基づき被告欠席による原告の勝訴、または原告のケース非立証が言い渡されます。欠席裁判を勝ち取っても被告は正当な理由があれば再審を要求することができます。

控訴

判決に満足がいかない場合や公正な裁判がされなかったと信じる場合は、判決が下された日から30日以内に控訴裁判所(Appellate Court)へ控訴することができます。この際に最初にクレームを提訴したスモール・クレーム・コートへ行き、控訴の意思を伝えます。控訴裁判所ではそのケースに関して公正な裁判がされたかどうか審査されます。

支払いの執行

勝訴後、30日を過ぎても支払いがされない場合は判決文のコピーを治安官 (Sheriff)、もしくは執行官 (Marshall)に「強制取り立て」として要求することができます。ただし、この際に被告の所有物や資産保管方法などの状況を提供する必要があります。銀行口座がわかっている場合は、被告の口座資金を差し押さえることも可能になります。

その他のオプション

非営利団体では提訴書類の提出代行を行っているので、何らかの理由で代行が必要な場合は下記のwebサイトをチェックすると便利でしょう。

ーTurnoCourt
ーnCourt

各地区にあるCourt Dispute Referral Centersでは訴訟を避けた方法で決着をつけるのを手伝ってくれる機関に関しての資料がもらえます。

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